進学や就職で子どもが自立し、ホッとしたはずが、何にもやる気が起きないなどの虚無感に襲われたら、それは空の巣症候群かもしれません。
今回は、空の巣症候群に陥りやすいタイプや、なってしまったときの対処法について、詳しく確認していきましょう。
空の巣症候群っていったい何?こんな症状が当てはまるなら要注意!

手のかかっていた子どもがひとり立ちし、自分の時間ができたのに、なぜか何もやる気が起きない。それはもしかすると、空の巣症候群かもしれません。
空の巣症候群とは
空の巣症候群とは、進学や就職、結婚などにより子どもが自立し、子育てにひと区切りついた親が発症する、一過性のうつ症状のこと。ひな鳥が巣立ったあとに空っぽになった巣に例えた病名で、子どもが生きがいだった母親が発症するケースが多く、「母親の燃え尽き症候群」と称されることもあります。最近では、身内の介護が終わったタイミングで発症するケースも少なくないようです。40~50代の女性の発症例が多いことから、更年期障害と混同されたり、症状が増幅したりすることもあります。
体や精神面に現れる不調にはどんなものがある?
空の巣症候群を発症すると、体にも精神面にも不調が現れ、生活に支障をきたすこともあります。体に現れる不調には以下のようなものです。
- 頭痛
- 肩こり
- 動悸
- 手足の震え
- 食欲不振
- 冷え
- 慢性的な疲労感
体の不調を感じて病院に行っても原因が見つからない、そんなときは、空の巣症候群を疑ってみるのもいいかもしれません。精神面で現れる不調には以下のようなものがあるでしょう。
- 無気力
- 不安感
- 焦り
- イライラ
- 孤独感
- 抗うつ状態
理由もなく涙が出たり、どうにもやる気が起きなかったり、イライラしたりと、精神的に不安定になってしまうのも、空の巣症候群の症状です。
空の巣症候群の症例
空の巣症候群の症例には、以下のようなものが挙げられます。
- 子どもが遠方で就職し、思い出に浸って涙ぐんでしまう
- 子どもが巣立ったあと会話のない生活が続き、孤独感が高まる
- 子どもが結婚したあと急に体調に異変が出てきた
- 子どもが巣立ったあとは自分のために生きようと思っていたはずが、何もやる気になれない
- 親としての役割が終わったように感じ、これからの人生に意義が見いだせない
症例は人によってさまざまです。また、空の巣症候群は一時的なものですが、症状がひどくなると、適応障害やうつ病など、本格的な精神疾患につながることもあります。
空の巣症候群に陥りやすいのは「生きがいは子育て」タイプ!

子育てが終わったすべての人が空の巣症候群になるわけではありません。空の巣症候群になりやすいタイプについて、把握していきましょう。
陥りやすいのは子育てに注力していた専業主婦!
空の巣症候群に陥りやすいのは、子育てに全力を注いできたタイプの人。子ども以外の人とあまり積極的に関わっていない、仕事をしていない、趣味がないなど、自分よりも子どもを優先してきた良妻賢母タイプの専業主婦が、空の巣症候群に陥りやすい傾向にあります。
しかしながら、これまで生活の主だったものがなくなると、少なからず虚無感に襲われるもの。空の巣症候群は、誰にでも起こりうる可能性があります。
夫婦の関係も影響!離婚した男性がなることも
空の巣症候群は、家族との関係性にも影響を受けます。特に、重要なのは夫婦の関係性です。夫が忙しく帰宅が遅い、出張が多く不在にしがち、コミュニケーションが少ないなど、夫婦の関係性が悪いと、孤独感が強まり、空の巣症候群になりやすいでしょう。
女性がなりやすい病気ではありますが、子どもが巣立ったり離婚したりしたタイミングで、男性が空の巣症候群になるケースもあります。
空の巣症候群の対処・予防策は?

子どもの自立のカウントダウンがはじまったら、意識したいのは空の巣症候群にならないための予防策。また、空の巣症候群になってしまったときにできる対処策についても解説していきます。
趣味や習い事などで自分の時間を作ってみる
空の巣症候群の対策として大切なのは、何かに没頭できる時間を見つけること。これまでは家事や子育てに注力していた分、自分のために時間を使わなくなっていた人も少なくないはずです。新しく習い事をはじめてみるなど、自分が楽しめることを見つけてみるといいでしょう。
何をしたらいいのかわからない場合は、昔好きだったことをまたはじめてみるのがおすすめです。子どもが生まれる前の休日はどんな過ごし方をしていたのかを思いだしてみると、自分の興味や関心を見つけるきっかけになるかもしれません。
仕事やボランティア活動をはじめてみる
空いた時間で仕事やボランティア活動をはじめてみるのもいいでしょう。これまで子どもに費やしてきた時間にできる仕事を見つけて、忙しく過ごすことで、気分を紛らわせることができるはず。家事代行やベビーシッター、これまでの家事経験を活かした仕事など、資格や経験がなくても働ける場はたくさんあります。仕事をはじめるための事前準備として、資格取得に向けた勉強をするのもおすすめです。
夫やパートナーとの関係を見直してみる
子どもが巣立ったあと、夫やパートナーとの2人きりの生活になるという人も多いはずです。これからの人生を円滑にするためにも、夫やパートナーとの関係を見直してみるのも、ひとつの方法です。会話を増やす、共通の趣味を作るなどして、2人の生活を楽しめるよう、関係を再構築してみましょう。
「子どもと自分は別人格で、別の人生を歩むもの」と理解することも大切
「子どもは自分とは別人格で、別の人生を歩むもの」ということを理解することも大切です。当たり前のようですが、理解できず子離れできない原因になっていることも考えられます。寂しさを埋めるために、何かと子どもに連絡をしてしまう人もいるかもしれませんが、子どもの自立は生きていく力を養うために大切なことです。子どもとの適度な距離感を持つように意識することも、空の巣症候群の対処法として挙げられます。
不眠や食欲不振などの症状は医療機関を頼ろう
空の巣症候群で夜眠れない、食欲がなく食べられないなど、体に不調が出て、生活に支障をきたすこともあるかもしれません。体調が悪いと気分も落ち込みやすくなってしまい、負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。ひどくなる前にいち早く医療機関を頼り、適切な治療を受けるようにしましょう。
家族が空の巣症候群になってしまったらどうする?

「一緒に生活する家族が空の巣症候群になってしまったかもしれない」、そんなときには、どう対応するのが正解なのでしょうか。対処策について押さえていきましょう。
家族の会話を意識的に増やす
空の巣症候群に陥る人は、子どもが自立したことで、自分の役割が終わったかのような気持ちになり、孤独感を募らせている可能性があります。家族の会話を意識的に増やすことで、本人の孤独感を紛らわせるように努めましょう。
料理を褒めたり、こまめに連絡をしたりと、会話の中で母親としての役割やその重要性を自覚させてあげることが、症状回復に効果的です。
外に連れ出す
家の中ばかりで過ごしていると、気分も鬱々として落ち込んでしまいがちになり、症状も悪化してしまいます。何かと理由をつけて、外に連れ出すようにしましょう。買い物に行く、旅行をする、体を動かす、共通の趣味を作るなど、外出する理由は何でもかまいません。外に出ることをきっかけに、行動範囲や視野が広がるようサポートできるといいでしょう。
まとめ
40~50代は、子どもが自立して子育てに一段落ついた達成感もつかの間、無気力になる空の巣症候群になりやすい時期でもあります。空の巣症候群にならないため、またなってしまったときには、周りと交流しながら自分の時間を作る姿勢が大切です。子育てに費やした思い出を胸に、これからは自分自身に目を向けた第二の人生について考えていきましょう。