今回は、片付けられない親とどうすれば断捨離をスムーズに行えるのかを考えていきます。相続手続きで実家の整理をする立場になったとき、スムーズに行う自信はありますか?物が多いと処分に費用がかかり、時間もかかるでしょう。そうならないために、親に生前整理を提案したところで、拒否されることも。
断捨離を拒む理由や、片付けに興味を持ってもらう方法についても見ていきましょう。
そもそも断捨離と生前整理にどんな違いがある?

「断捨離」と「生前整理」は、2つとも同じ意味だと考える方もいますが、厳密にいえば若干ニュアンスが違います。まずは、断捨離と生前整理の意味についておさらいしましょう。
断捨離とは?
家にある物を、いる物といらない物に分類して不要な物を捨てることをいいます。今の生活を過ごしやすくするために用いられる方法で、生活動線を確保する役割もあるでしょう。
生前整理とは?
亡くなった後に、家族や親戚が部屋の掃除や財産整理に困らないように整理整頓しておくことです。相続対策や遺品整理の要素が強いでしょう。
断捨離も生前整理も、「いつ」しなければならないといった決まりはありませんが、物の量に応じて計画を立て、少しずつ始めるとスムーズに進むはずです。
片付けられない親はどうして断捨離を拒むの?

断捨離や生前整理で困るのが、親との衝突でしょう。特に、普段から部屋を片付けられない親ほど、片付けを拒む傾向があります。親が片付けを拒み、ケンカになってしまうと、断捨離が進まないだけではなく、親子関係に亀裂が入る場合もあるのです。片付けられない親ほどどうして断捨離を拒むのか、その理由を探っていきましょう。
そもそも片付けが苦手
人の得意不得意はさまざまです。根本的に片付けが苦手な人もいるでしょう。片付けが苦手な人に、「掃除をしなさい」といっても、どこから手を付けたらいいのか、またどうしたらいいのかわかりません。できないことをいわれ続けると、ストレスがたまり、イライラする原因になるでしょう。
そうすると、爆発したストレスを家族にぶつけ、作業が進まなくなることもあります。
断捨離という言葉が嫌い
断捨離と聞くと、「捨てる」イメージを強く持つ人もいるでしょう。年配の方には、物を捨てることはもったいないと感じる人が多くいます。「捨てる」というイメージが良くないために、抵抗感を抱いてしまうのでしょう。
どういった言葉を好まないかは、家族や親族ならなんとなく気づくはずです。「捨てる」や「断捨離」などの言葉が苦手なら、違う言い回しで声をかけるようにしましょう。
年齢的・体力的な問題
実は、年齢や体力的な問題で、断捨離を拒んでいるケースもあります。子供からすると、いつまでもしっかりとして、体力のある親をイメージしているかもしれませんが、実際には年齢とともに体力は衰えているものです。
ちょっとした動作がきつかったり、物事を計画的に進めるのが難しくなっていたりすることもあるでしょう。また、集中力が続かないケースも考えられます。体力的に片付けが難しい場合は、業者に代行してもらうのも1つの方法です。
心の病気の可能性もある
片付けを拒む方の中には、心の病を患っている可能性があることをご存知ですか?強迫性障害と呼ばれるもので、物を捨てる行為に不安を感じ、物を集めなければならないと強迫観念を持つ場合もあります。
こういった場合に、断捨離を強要すると、精神的に追い詰めてしまう可能性があります。
これまで片付けをしていた人が片付けられないケースなど、心の病気を疑う状況があれば、心療内科や精神科など専門家に相談し、チェックしてもらった方が良いでしょう。
そもそも片付けないとそんなに困るもの?

そもそも片付けは、しなければならないのでしょうか?片付けによって、親ともめる恐れがあるのならば、しなくてもいいと思う人もいるでしょう。ここでは、片付けをしないとどんな困る事案があるのか考えていきます。
ゴミ屋敷化するかも
片付けをせず、物ばかりが増える状況が続くと、家がゴミ屋敷化するでしょう。ゴミ屋敷化してしまうと、衛生的に悪いだけではなく、害虫の増加、火災の原因、異臭などを引き起こす可能性もあります。
そうすると、親の家だけでなく近所の方に多大な迷惑をかけることになるのです。
地震や災害の際に逃げ遅れるかも
家の中に物があふれていると、災害が起きた際に、逃げ遅れる可能性があります。上の棚に置いていた物が、地震の揺れで落ちてきたり、その落ちた物が通路をふさいで逃げ道がなくなったりするケースも考えられるでしょう。物を増やし整理ができていないために、安全であるはずの家が、命に危険を及ぼす存在となってしまうのです。
ケガの原因になるかも
散乱している物につまずいて転倒し、骨折する危険もあるでしょう。1人暮らしの親であれば、発見が遅れリハビリが長期化する恐れがあり、打ちどころが悪ければ命すらも危険です。
一見、断捨離をしないだけのことで、さほど大きな問題だと感じない人もいるでしょう。
しかし、色々なシチュエーションを考えると、たくさんの危険が潜んでいることを忘れないでください。
片付けられない親を断捨離に興味を持たせるには?

次に、片付けられない親を断捨離に興味を持たせる方法を紹介します。基本的には、相手に寄り添う方法で、どれも簡単なものばかりです。
1つ取り入れるだけで、断捨離に興味を持つ人もいれば、すべての方法を総合することで上手くいく場合もあります。状況に応じて工夫し活用してみてください。
断捨離という言葉を使わない
先ほど紹介したように、人によっては「断捨離」という言葉を受け入れられないケースがあります。そのため断捨離という言葉を使わず、違う言葉で片付けに誘導すると良いでしょう。
たとえば、「使っている物と使っていない物を分ける?」や「最近使っていない物はこの箱に入れてみようか」などの声かけをしてみてください。
身近な部屋から始める
もう1つは、普段良く使う部屋から整理する方法です。たとえば、テレビを置いているリビングや寝室などが良いでしょう。
いつも使い、眺めている部屋がきれいになると、物が増えることに違和感を覚え、自然と片付けるようになるケースもあります。
急ピッチで進めない
片付けのスピードも大切です。親と同居していなければ、貴重な休日を使って実家に帰る人やわざわざ仕事を休んで片付けの手伝いに行く人もいるでしょう。
そのため、「できるだけ早く片付けを終わらせたい」や「今回はこの部屋とこの部屋を終わらせる」など計画を立てて挑んでいる人もいるはずです。
しかし断捨離する物の所有者は親であって、それぞれに思い出があり、考える時間が必要なので、完璧を求めず大らかな気持ちで接しましょう。
片付けられない親とスムーズに断捨離するポイント

最後に、片付けられない親とスムーズに断捨離を進めるポイントを4つ紹介します。親子だからこそ何でもいい合えるよさもあるのですが、親子だからこそ相手を傷つけてしまうケースがあることも忘れないようにしましょう。
親に任せず一緒に行う
ケンカになるのが嫌だからといった理由で親任せにするのはやめましょう。片付けられない親にとって、断捨離は苦痛です。また、「片付けなければならない」と頭ではわかっているものの、身体が追い付かないケースもあります。ゴミ屋敷化して親がケガをしたり命の危険を感じたりする前に、一緒に片付けるのが得策です。
子供が司令塔となって、無理のない計画を立ててあげればスムーズに進むでしょう。
親の気持ちを優先する
断捨離の際に、子供にとっていらない物だから捨てるという判断は、言語道断です。捨てるか捨てないかの判断は、親の気持ちを優先しましょう。
親にとっては思い出のつまった品物ばかりです。気持ちの整理がついたら処分する箱や保管箱などを作って分類すると、親の気持ちをないがしろにせず整理できるでしょう。
親を否定しない
子供が考えていたよりも片付けが進まなかったり、事前に片付けをお願いしていたにも関わらず部屋が片付いていなかったりすると、親を否定する言葉を使ってしまう人もいるはずです。
気持ちはわかりますが、いわれた親はとてもショックでしょう。もし自分がいわれたらどう思うのかを考えて、発言してください。
たまには思い出に浸る
時間を決めて断捨離に集中したい気持ちはわかりますが、たまには思い出話をしながら作業するのもおすすめです。そうすることで、心に余裕が出ることも。また、思い出話ができたからこそ、その品物を手放そうと考えるケースもあります。
焦らず、親とじっくり向き合うと、断捨離がスムーズに進む可能性が高いでしょう。
まとめ
断捨離や生前整理は、必ずしなければならないものではありませんが、親が亡くなったとき慌てないために、事前にしておくのがおすすめです。
もちろん、ケガを防ぐなど親の健康につながるメリットもあるため、短期間ではなく長期で計画を立てて少しずつ行うと良いでしょう。