
デジタル遺品という言葉を聞いたことはありますか?実は最近注目されている言葉で、亡くなった人のデジタル機器のデータを指したものです。そこで、どうやって整理したら良いのか、またデジタル遺品に困らないために準備しておきたい方法などを、詳しく紹介していきます。
デジタル遺品とはそもそもどういうものなの?

デジタル遺品とは、デジタル機器の残されたデータをいいますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか?まずは、デジタル遺品がどういったものなのか説明していきます。
デジタル遺品とは?
デジタル遺品とは、パソコンやスマートフォン、携帯電話などに残っているデータのことです。電話番号や住所などの個人情報はもちろん、写真やアプリ、クラウド情報も含まれます。最近はスマホにすべての情報を保存して管理している人も多いので、人に知られたくない情報を残している場合もあるでしょう。このようなデジタル遺品は「すぐに削除すれば良い」と考える人もいるでしょうが、データを完全に削除できなかったり、思いもよらないところからデータが出てきたりして困ることもあります。
デジタル遺品にはどういう種類があるの?
デジタル遺品は大きく3つの種類に分けると「パソコンやスマホ、携帯など電子機器内のデータ」「クラウドやSNSなどのWEB上のデータ」「ネット銀行や動画配信サービスなどのアカウントデータ」があります。電子機器内のデータは、パソコンやスマホ、デジカメなどに保存されている写真から書類のデータや名刺まで様々です。メモリやハードディスク内に保存されている文章や動画、音声などの記録データも含まれます。
WEB上のデータは、具体的にクラウドで管理しているデータやメール、SNSやブログなどを指します。アカウントデータは、ネット銀行やネット証券のオンライン口座、動画または音楽を定額で楽しめるサブスクリプションサービスやネットショッピングのアカウント、決済するために登録されたクレジットカード情報などです。
デジタル遺品整理の何が問題なの?具体例をチェックしよう

デジタル遺品整理のなにが問題なのか、疑問に思っている人もいるかもしれません。ここでは、デジタル遺品整理で引き起こされたトラブルを、実際の話をもとに具体例として紹介していきます。
ネット証券口座発覚で相続争いに!
相続手続き完了後や財産がないと思っていたところに突如高額な財産が発生すると、トラブルのもとになることがあります。亡くなった父親のパソコンをチェックしていると、ネット証券の口座を発見した息子たち。残高情報を取り寄せると、3,000万円ほどの有価証券が見つかり、誰が相続するのかもめたそうです。他にもFXや信用取引の口座があった場合は、決済が遅れて多額の損失を出す場合もありますので注意しましょう。
死後のSNSアカウントやブログに注意!
故人がSNSやブログをしていた場合、そのままにしておくとアカウントを乗っ取られて、写真やデータが流出する危険もあります。ログイン方法がわからないためアカウントを削除せず放置していた遺族。故人が保存していた動画や画像がSNS上に突然アップされていたそうです。乗っ取りにあうと、嘘の情報を流されたり他人の画像がアップされたりと多方面に大きな迷惑がかかるので注意が必要です。
意外と忘れがち!利用料金が発生する有料サイトが残っていた
有料サイトや会員制サイトの登録解除を忘れると、知らない間に料金を支払っているケースもあります。人気のサブスクリプションサービスをいくつも登録し利用していた故人。遺族は、故人が有料サイトに登録していたのを知らず、解約するまで料金を支払い続けていたそうです。ひとつのサイトだけなら大きな金額ではないものの、いくつかの有料サイトを何ヶ月も放置してしまうと金額も大きくなるので注意してください。
見たくない写真が出てきた…
デジタル遺品整理では、見たくなかった人の写真や動画が出てきて不快な思いをすることもあるようです。母親が亡くなりスマホのデータを消そうと思っていたところ、興味本位で写真管理アプリを見てしまった息子。近所の男性との写真やメールが見つかり、母親の浮気が判明したという例もあるそうです。知らなくても良い情報で、嫌な思いをするリスクに注意しましょう。
デジタル遺品はどうやって処分したら良いの?

これまで紹介してきたように、デジタル遺品にはさまざまな種類があり、トラブルを引き起こす場合もあります。そんなデジタル遺品の処分はどうしたら良いのでしょうか?デジタル遺品の整理方法について紹介していきます。
残っているデータは完全に削除
パソコンやスマホなどのデジタル遺品内に残っているデータは、完全に削除して廃棄処分してください。機器を壊す人もいますが、それでは情報が残ったままなので危険です。初期化する機能を使えばすべてのデータが消えるのでおすすめですが、方法がわからない人や完全に消去できたか不安という人は、電子機器に詳しい専門家や各通信会社のショップで見てもらうと良いでしょう。
電子機器は売却もひとつの方法(PC内だけでなくクラウド情報も)
電子機器は売却すると、高値で引き取ってくれる場合があります。ただし、デジタル遺品も相続の対象となるので、相続の話し合いが必要です。話し合いの結果、電子機器を相続することになれば、内部のデータへアクセスすることは問題ありません。
相続の話し合いが済んでいない電子機器を、勝手にロック解除して個人情報を閲覧すると、相続人同士でもめて、訴訟問題となる場合もあります。また、無断でアクセスすると、不正アクセス禁止法に抵触する可能性もあるので注意してください。
業者に依頼するのもおすすめ
一括してすべての遺品を整理してくれる業者もあります。パソコンのログインパスワードの解除やデータの移行、アルバム整理、プリント、故人のプライバシーを守るため遺族に見せて良いか業者で識別するなど、さまざまなことをしてくれます。基本的な依頼の流れは、業者に連絡後、見積もりをしてもらい契約します。その後、遺品整理の作業をしてもらい、最後に精算して完了です。
デジタル遺品整理で困らないために生前にやっておきたいこと

ここまで説明してきたように、デジタル遺品整理には手間や問題点がたくさんあります。自分がデジタル遺品整理する側になることもありますが、自分のデータを家族や親族に残してしまう場合もあるでしょう。そのため、家族や親族に迷惑をかけないように、事前にデジタル遺品について知っておくと良いポイントをピックアップしました。
家族が困らないようにアカウントなどを書いておく
これまでの人生を振り返り、家族への思いを伝えるエンディングノートなどに、アカウント情報やデータ内容などを書いておくのがおすすめです。遺言書のように法的拘束力はありませんが、エンディングノートやメモに、自分がどういったアカウントを持っていたのか分かるように、ネット口座やクラウドデータなどを書いて残しておくと良いでしょう。アカウント情報やデータ内容を書いて残しておけば、死後のデジタル遺品整理がスムーズに行えます。
見られたくないデータは別管理
保存しておかなければいけないものの、どうしても人に見られたくないデータは、別のフォルダを作ってロックしておきましょう。あらかじめ分けてフォルダに名前をつけておくと、残された家族の手間は省けます。また、データを管理するためのソフトやサービスを活用するのもおすすめ。たとえば、一定期間パソコンを起動しないとファイルを削除するソフトが開発されているので、チェックしてみると良いですよ。
不要なデータは生前から削除しておこう
若くても高齢でも、いつどこで自分の身になにが起こるかは、誰にもわかりません。いざというときに気がかりなことを残さないためにも、不要なデータはこまめに削除したり整理をしたりしておくのがおすすめです。お互いに嫌な思いをせず安心して過ごせるでしょう。
まとめ
デジタル遺品整理に限らず、相続に関する話し合いは、生前には中々しにくいものです。しかし亡くなったあとに困るよりも、いろいろなことを家族と事前に共有しておけば手続きがスムーズに進みます。日々の不要なデータ削除や記録、情報共有はお互いのために重要な作業だと意識し、家族に迷惑や嫌な思いをさせないために行動しておきましょう。