
親が終活を行わずに、急に亡くなってしまった場合、葬儀や相続などさまざまな手続きが必要になります。突然そういった事態になったとき、スムーズな対応ができるように、親の死後に必要となる手続きについて知っておきましょう。今回は、親のもしものときに備えておきたい手続きの流れや、親への終活の勧め方を紹介します。
親に万一のことがあったらどんな手続きが必要なの?

親に万一のことがあったら、どんな手続きが必要なのか知っていますか?頻繁に行う手続きではないからこそ、「わからない」とか「手続きが面倒」と思ってしまいがちです。ある程度どんな流れなのか想定しておけば、慌てることはありません。簡単に、死後に必要な手続きについて紹介します。
死亡診断書を受け取り葬儀の手続き
人が亡くなった場合、死亡の確認が必要です。病気で亡くなった場合は、病院の医師によって確認され、死亡診断書を受け取ります。事故死や突然死などであれば、医師から死体検案書を受け取るでしょう。これらと一緒になっているのが死亡届で、死亡届は死亡から7日以内に役所へ提出しなければならず、合わせて火葬許可申請書も提出します。また、同時に葬儀の準備も必要で、葬儀社を自分で探したり、病院から紹介されたりするでしょう。
公的手続きがたくさん!忘れずに行おう
亡くなった人の権利は、亡くなった時点で停止しなければなりません。停止や変更手続きに、どういったものがあるのかいくつか挙げていきます。年金受給停止、介護保険資格喪失届、住民票の抹消届、世帯主変更届、雇用保険受給資格者証の返還、高額医療費の申請などです。手続き締め切り期間は、主に死後14日以内から5年以内といったように、幅があります。いなくなって寂しいと思う時間も必要ですが、手続きによって期間が違うので、忘れないように手続きしましょう。
相続手続きの流れ
亡くなった人のお金や骨董品など財産は、法定相続人で分配しますが、まずは、遺言書があるかどうかの確認が必要です。また、相続財産の把握や法定相続人の確定をしなければなりません。その後、遺言書があればその内容の通りに分配し、遺言書がなければ法定相続人間で話し合い、分配方法を決めます。
相続を放棄したい場合は、相続開始を知って3カ月以内に手続きをしなければなりません。また、相続開始を知った翌日から4カ月以内に被相続人の所得税の申告をし、10カ月以内には相続税の申告と納付をする必要があります。
親が亡くなるとどうして大変といわれているの?

慣れない手続きが増えるからといった理由もあるかもしれませんが、「親が亡くなると大変」といわれるのはどうしてでしょうか。なぜそういった問題が発生するのかを説明します。
どんな財産がどこにあるか把握できていない
親元から離れて暮らし、なかなか実家に帰省できない子ども世帯だと、親がどれだけの財産をどこに持っているのか把握しづらいのが現実です。親の近くに住んでおり、コミュニケーションを頻繁にとっている家庭であれば、だいたいの把握ができるかもしれません。
ただ、親の財産の話を具体的にする機会はなかなかないでしょうから、近くに住んでいるからといって全部把握できるわけではないでしょう。このように、どこになにがあるのかが不透明だからこそ、子ども世帯は一から探さなければならず大変に感じるのです。
遺品整理が大変
若い頃は掃除好きで整理整頓できていた人でも、高齢になるにつれて体が思うように動かなくなったり、散らかることを気にしなくなったりしてものをため込むことも。それが進み過ぎてゴミ屋敷のようになり、親が亡くなったあとに子ども世帯が掃除や処分に困ることがあります。
誰に連絡してほしいのかわからない
子ども世帯が遠方で暮らしていると、親の交友関係がわからず、万一のことがあったら誰に連絡したら良いのかわからないこともあるでしょう。親と仲の良かった人に葬儀日程の連絡をしようと思ってもわからない、形見分けしようにも誰に連絡したら良いのかわからないなどとなってしまうのです。
普段どんなサービスを契約しているのかわからない
相続手続きも大変ですが、新聞や携帯などの解約手続きもしなければなりません。ただ、普段どんなサービスを契約しているのかがわからないと、解約もできないのです。そのため、企業からのDMや電話などから判断しなければならないでしょう。そうすると時間や手間がかかるので、意外と大変な作業といえます。
いざというときに困らないために終活がおすすめ!

ここまでで説明したように、親が亡くなると相続手続きだけでなく、公的手続きや遺品整理、サービスの解約などさまざまな手続きをしなければなりません。これらの手続きで困らないために、すべてを把握するのは難しいでしょう。そこでおすすめなのが、生前整理です。ここでは、生前整理につながる終活について紹介します。
終活とはどんなもの?
終活とは、人生の終わりについて考える活動のことです。たとえば、荷物や本などの断捨離や遺言書の作成、自分の葬儀について、お墓の準備などをします。親族や友人などに迷惑をかけないように準備することでもあり、自分らしく過ごすために行うためのものでもあるでしょう。
終活意識の高い年代は30代?!いつから始める?
楽天インサイト株式会社の調査によると、終活をしようと考えている年代は、主に50代や60代ですが、30代が46%ともっとも多いのも特徴的です。おひとりさまが増えているのもひとつの理由でしょう。いつから終活を始めるのかという質問については、60代や70代が多くなりました。ただ、死はいつ誰に起こるかはわかりません。後悔しないようにと考えれば、若いうちから備えておくと良いでしょう。
終活を始める理由は?
終活を始める主な理由は、「家族に迷惑をかけたくないから」「病気やケガで介護生活になった場合に備えるため」「自分の人生の終わり方は自分で決めたい」などが挙げられます。人に迷惑をかけず、より良い人生を送るための手段として、終活を位置づけている人が多いのでしょう。
終活で用いられるエンディングノートとは?
終活の際に用いられるのが、エンディングノートです。エンディングノートとは、家族に伝えたいことを記しておくもので、遺言書のような法的な効力はありません。具体的には、本籍や交友関係など自分にまつわることや、どこの銀行と取引があるのかといった資産に関すること、お墓や葬儀の意向など、内容は自由です。
終活に興味はあるものの誰に相談する?
終活に興味はあるものの誰に相談したら良いのかわからない人もいるでしょう。そういった人は、銀行などで開催される終活セミナーに参加するのもひとつの方法です。その他には、終活カウンセラーや終活ライフケアプランナー、終活アドバイザーなど資格を持った人に相談しましょう。もちろん、弁護士や司法書士といった相続にまつわる知識のある方に相談するのもおすすめです。
生前整理が重要なのはわかったけど…言い出しにくい

終活など生前整理が重要なのはわかるものの、死や相続に関する話なので話しにくいとネガティブに感じる人も多いでしょう。ここでは、生前整理の際に、注意したいことやどんな話法で切り出すと良いのかを紹介していきます。
無理強いはしない
突然親に「エンディングノートを書いて」というと、死を望んでいるかのように思わせ、感情的になるだけです。感情的になってしまうと、エンディングノートどころでなく、家族関係にも亀裂が入る可能性があります。無理強いはせず、言葉に注意しましょう。
身近な人が亡くなったときの大変さをきっかけに
よく用いられる手法は、身近な人が亡くなったときに、相続手続きの大変さをきっかけとして、うちも備えておこうという流れで話を切り出す方法です。話しやすいものの、きっかけがないと話しづらいのがネックでしょう。
親世代を動かすにはまず自分が動く
親に終活を勧めるのであれば、まず自分が始めるのもおすすめです。自分の終活をしたことを話せば、親も興味を持つ可能性があります。または、「自分が終活に興味があるから、一緒にやってみない?」と誘う方法も良いでしょう。
親の終活でできるだけ把握しておきたいもの

終活の重要性を話しても、なかなか行動してくれない親もいます。そんなときに、できるだけ把握しておきたい項目をピックアップしました。コミュニケーションをとれば確認できることばかりなので、帰省したときなどに話し合ってみてください。
かかりつけ医や服薬情報
親との関わりがあまりないと、親の持病やアレルギー、どんな薬を飲んでいるかなどを把握できていない可能性があります。急に倒れたときや治療が必要なときに困るので、かかりつけ医や薬の情報は把握しておきましょう。
親世代の今後の意向
病気や介護、認知症になったときの意向を聞いておくのも大切です。子どもは「自分が介護したい」と思っていても、親は迷惑をかけまいと入院を希望する場合があります。希望にそわないとかえって、親にストレスをかけてしまうこともあるので、家族間で話し合っておくと良いでしょう。
葬儀やお墓に関する意向
葬儀やお墓について、「死んだら子どもに任せる」という人もいれば、「盛大な葬儀にしてほしい」という人もいます。子どもの立場で考えると、話し合いをしていなければ、なにが正解なのかがわからず、「あの葬儀で良かったのかな…」「もっと大きなお墓が良かったのかな…」と心のモヤモヤが消えません。
お互いのために、ある程度意向を確認しておくと良いでしょう。
どんな金融機関と取引があるのか
相続手続きに時間がかかるため、あらかじめ聞けるようならどこと取引があるのかくらいは聞いておいてください。話しづらければ、「相続手続きで手間がかからないように、取引金融機関の書類はこのファイルにまとめておいて」などと伝えておくと良いでしょう。
まとめ
生前整理や終活は、残された家族が楽をするためだけのものではなく、本人の人生をより良く過ごすためでもあります。死は、どうしてもネガティブに捉えがちなものなので、終活を勧めるのは気が引けるかもしれません。しかし、お互いのことを考えれば重要な役割をするので、きっかけを作って話し合っておきましょう。